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2010/11/13

JAXA川口教授特別講演 「はやぶさ」帰還の旅路

Photo
 昨日11/12に有楽町の東京国際フォーラムで開催された「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2010」というビジネス向けセミナーに参加してきました。その特別講演でJAXA川口淳一郎さんのお話がありましたので聞いてきました。
 川口さんといえばこの6月に奇跡の地球帰還をした小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトリーダで今回の講演の題目も『「はやぶさ」帰還の旅路』ということで事前にかなり注目を浴びておりました。なんでも物凄い数の申し込みがあったとかで本会場は満席、中継会場も抽選での入場となったそうです。
 自分は運良く本会場で聴講することができました。

 このセミナーの主催のNECは「はやぶさ」のイオンエンジンやその他のシステムを開発したメーカでもありその縁で川口先生を呼んでいただけたとのことです。
 そして「はやぶさ」の帰還カプセルの特別展示も行われることが今週になって急遽発表されました。そのせいか午前10時の開場時には入場待ちの行列がこの手のイベントにしては予想以上に伸びていました。「はやぶさ」効果おそるべし。まぁコミケやワンフェスなんかに比べれば大したことないんですけどね(笑)

 5分ほど待機の後に入場し「はやぶさ」カプセル見学の整理券をもらいました。2回目の10:24の回でした。
 展示会場前のステージでは「はやぶさ」プロジェクトのPVが大画面で上映されておりNECの技術がどのように生かされ困難を乗り越えたかの説明がされてました。また「はやぶさ」の1/2スケール模型やイトカワの1/1000模型も展示されており注目を浴びてました。
 暗幕で仕切られた展示スペースに入ると6つのケースが並んでおり、それぞれ「インスツルメントモジュール(カプセル本体)」、「搭載電子機器」、「パラシュート」、「背面ヒートシールド」、「前面ヒートシールド」、「カプセルのエンジニアリングモデル(1/1模型)」が入っていました。(会場内は撮影禁止でしたのでご了解願います)
 JAXAの職員の方だと思うのですが初めに3分ほどの解説がありました。60億キロの旅をおえたカプセルの存在感は圧倒的なものがありますね。
 帰還カプセルの展示は8月の丸の内で見ていたのですがパラシュートは自分ははじめて見ました。またヒートシールドはここ最近の展示では出ていなかったので今回はかなり貴重な体験となりました。

 カプセル見学を終えて他のビジネス向けの展示を見て周った後いったん昼食のため展示会場を出ます。
 そして13時頃に講演会場のあるホールへ向かいました。
 講演開始30分前だというのに既にホール内には聴講者がかなり集まってきていました。それだけ皆さん期待しているんでしょうね。

Kawaguchi
 上は会場で配られた講演資料の表紙です。
 定刻の13:30を少し過ぎて川口さんが壇上に登場。講演開始です。生川口教授ですよー(笑)

 講演が始まって感じたのは川口さんは凄く早口だということ。時間制限のせいもあると思いますが次から次と出てくる言葉の波はとても頭の回転が速い人という印象でした。そして終始にこやかな表情なのですが真剣なまなざしで研究に対する責任と自信というものが垣間見えました。プロジェクトリーダーとはかくあるべきという感じですかね。

 まずは「はやぶさ」とはどういう探査機なのかという解説から始まりイオンエンジンの効率のよさとか工学実証の大きな目的の話がありました。
 つづいてプロジェクトの立ち上げにまつわる話で、きっかけとなった25年前の惑星探査小委員会について。当時NASAとの共同プロジェクトとして始まったのがNASA側の独自プロジェクトとしてアイデアを盗まれてしまったことを非常に悔しそうに語っていました。その反動で絶対に真似されない相手がひるむような荒唐無稽なオリジナリティの発揮にこだわってMUSES-C(後の「はやぶさ」)を計画したそうです。この負けじ魂が「はやぶさ」の快挙を成し遂げたのだなと思いました。

 イトカワ着陸を高精度で行えたのは実は低精度の人間系を加えて臨機応変な判断をして達成したとか面白い話が続きましたが、やはりメインイベントは燃料漏れから通信断絶、そこからの復帰のあたりでしょうか。
 通信断絶はサンプル採取時の弾丸発射失敗とのダブルパンチでプロジェクトにかなり危機的な状況を引き起こしたそうです。もはや運用が続けられないとかもという絶望的な雰囲気の中、メーカを含むプロジェクトの士気を維持することを第一優先で川口さんは動き、たとえば毎日ポットのお湯を新しい物に取り替えてプロジェクトが開店中という演出をしたそうです。
 「はやぶさ」と通信回復するための【必要条件】が整う確率が1年以内に60~70%であると計算を急いでやったのも実は年度末を越えてプロジェクトを存続させるためであったということです。ここで【必要条件】というのが味噌で【通信回復】の確率ではないということです。お役人はそう勘違いしてしまうかもしれないですけどね。
 ここらへんが川口さんの策士たるところでしょう。もしかしたらよい政治家になれるのではないでしょうか?(笑)
 リーダーが可能性を示すことがとにかく大事であり、やれるだけのことはやり尽くすということです。そうすることでプロジェクト全体の士気が上がり「ゴールは地球」という目的に向けて一丸となってぶつかっていけたのだとも。そして誰が提案したのであっても良いアイデアはすぐに検討していくということで数々の困難を乗り越えられたわけです。
 終盤のイオンエンジンのクロス運転などは最たる例ですね。

 飛不動尊へお参りに行ったのもそんな中でいわゆる神頼みということになるのですが、それは出来ることを全てやったかの確認の意味でもあったというあたりが川口さんらしいと思いました。
 人事を尽くして天命を待つということですね。
 やれるだけのことをやって後は巧くいくかは運なのですが、その運をどれだけ引き込めるかは努力次第です。運を実力にとはそういうことなんでしょう。
 そういう結果が出せたことはお参りのご利益はあったのかもしれないとおっしゃってました。

 尚、この後の「中和神社」へのお参りも含めて公務員である川口さんとしては全て個人的に自費で行ったのであり政教分離であることを強く念を押していました(笑)

 「技術より根性」というのも川口さんの言にありますが、それは「技術あってこその根性」であって意地と忍耐で乗り越え未来に自信と希望を与えなければならない、「高い塔に登らなければ新しい地平は見えない」という言葉は技術者でなくとも肝に銘じたいところです。

 アメリカでは「はやぶさ」が成し遂げた数々の世界一は色々と難癖をつけて実は2番目でアメリカこそ1番だというプロパガンダをしているそうです。(逆に言えばこれは宇宙開発で日本が同じ土俵に立ったとアメリカが認識したとも言えます)そうすることによりアメリカ国民の士気を上げているそうです。
 それに引き換え「2番目では駄目なのか」と事業仕分けしてしまうことは嘆かわしい、小惑星サンプルリターンの技術は日本だけが持ち発信できるのであり「世界一」でなくてはならないと川口さんは強く主張していました。
 60億キロの旅をしてきた帰還カプセルは本物でありその成果を実感してほしいということでした。

 講演を聴き終えて「はやぶさ」の奇跡は起こるべくして起きた、実に人間の物語だと思いました。
 日本の未来ということを考えたとき自分は何が出来るのだろう?自分にとって高い塔とは何か?
 是非とも新しい地平を見てみたいものです。


 ついでに宣伝。
 「はやぶさ」帰還に際して作った動画です。

 当初は8823(はやぶさ)再生が目標なんて思ってたのですが、既に1万再生をとっくに過ぎて今もじわじわと再生数伸びていて嬉しい限りです。
 ありがとうございます。

 元ネタとなった「風のただいま」も殿堂入り間近のようですのでよろしく。

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